イチゴショートケーキのケーキちゃんは
ちょっとおひとよしで、
みんなにクリームやイチゴを
どんどんあげてしまいます。
とうとうスポンジだけになってしまったケーキちゃんの前に
ゴージャスデザートのふたりぐみがあらわれて…
『ケーキちゃん』
さとう めぐみ ぶんとえ(205×210mm 32p)
定価1155円(本体1100円+税)

書評など
『姿が命、目で食べるもの』 産経新聞 2011.7.3
うーん、おいしそうだ。ケーキを食べるのに、理屈はいらない。みているだけで、つばがわいてでてきてしまう。ごくん。手もとにはフォークが1本あればいい。あとはひたすら食べるだけ。でも、ちょっと待って。それはないでしょ、という人は少なくない。なぜって、おいしそうなケーキには、食べる前にどうしても行わなければならない儀式があるからだ。
あれにしようかこれにしようかと散々迷った末に注文したケーキが、目の前に運ばれてきたとしよう。食べる人が行う儀式とは、その、いまだに一口も損なわれていないケーキの姿を、好みの角度から写真に収めることだ。たいていは、ここでカメラ付きケータイの出番となる。人目もはばからずにカシャッ、カシャッ。
どうしてそんなことするの? あるとき、無粋にもきいてみた。だって、食べたらなくなっちゃうから。そんな答えが返ってきた。食べればなくなるのは当然だ。宇宙の摂理でもある。でも、ケーキを食べる人にとって、それはあまりにもやりきれない結末らしい。愛しいケーキの喪失だ。だからペットを撮るように、食べる前のケーキを撮る。思い出のケーキを撮る。生前のケーキを撮る。
さて、この絵本にでてくるケーキたちは、主人公のショートケーキのケーキちゃんをはじめ、ババロアちゃんも、クレープくんも、だいふくくんも、みんなとてもおいしそうだ。デラックスパフェとプリンアラモードに至っては、思わず目が吸いついてしまう。ケーキにとって、姿、すなわち見てくれは命といってもよさそうだ。だからこの絵本の中でも、ケーキたちはいつまでもだれにも食べられることなく、幸せなケーキの世界で生きている。もしかしたら、ケーキは目で食べるもの? そんな思いさえ強くなる。寝る前の子供に読んで聞かせるのは罪ともいえそうな、たっぷりとおいしそうな絵本だ。
評・宝田茂樹(文化部編集委員)